長谷川 敏 Satoshi HASEGAWAのBlog

声楽テノール。東京藝術大学卒、同大学院修了。ウイーン国立音楽大学卒。 東京芸術大学、お茶の水女子大学、洗足学園音楽大学講師、茨城大学教授を歴任。東京二期会会員。茨城大学名誉教授。LiberoCantoJapan主宰者。 Libero Canto歌唱法、すなわちウイーンのSzamosi教授の自由な息によるクオリテイーの高い歌唱法を長年に渡り、研究し実践してきている。 神奈川県藤沢市在住             

2012年08月

湘南高校の合唱部の皆さんへ

湘南高校合唱部の皆さんへ.             2012/08

この度冨樫君より、皆さんを代表してご丁寧な Mail を頂きました。大変有り難うございます。

コンクールに引き続いて富山での演奏も立派にお出来になったようで、お手伝いさせてもらった私にはこのご報告が、なにより嬉しく思います。この夏に優秀な湘南高校の皆さんと、音楽に対して真剣に向き合う時を持てたことは私に取りましても新たな素晴らしい刺激でした。
レッスンの中で皆さんの集中と反応が極めて良いのにはとても驚かされました。その時間の中で著しい進歩が見られたのですが、元来、歌唱というのは、簡単にその場でできることというのは少なくて、長いことトレーニングして行って初めてものになり、実力になるということの方がずっと多いのです。

冨樫君はじめ三年生はこの夏で現役を外れるとのこと、これは
残念ですが、二つの大きな本番をなし得た充実感と共に部から別れるのはとてもよかっですね。 在校生とともに今後ともご自身の技術の向上に、是非邁進して下さい。そうすることでより深く音楽を体得し、真の理解が得られることと思います。

さて篠原先生からも今回の演奏について好評を得られた旨のご報告を頂きました。
御校の合唱のレヴェルがなお一層上がって行くことができれば本当に素晴らしいことです。皆さんはまさにそうした力を持っているのですから!

先日 皆さんから頂いたご質問へのお答えを、私のここの Blog「 長谷川敏 ブログ」に Up  しておきますのでどうぞご覧下さい。またこのブログをさらに追っていくと、発声と歌唱全体についてのページが見つかります。これは横浜国大附属鎌倉小学校で開催された音楽の先生のための講座に私は講師として出席しましたが、その際に著したパンフレットです。どうぞ読んで参考にして下さい。
それでは皆さんの合唱部の輝かしい将来を期待しています。

長谷川  敏
satoshi hasegawa         次ページへつづく

Q & A
◉「ソロと合唱とでは声の出し方に違いがあるのでは?」
自然な発声によって、透明感があり素直なヴィヴラートで明るく響くという基礎的なことでは何も違うところはありません。
ただ複数の人が歌うことで、自分の声を抑えることが要求されますね。しかし受身にならずに、良い発声で皆が歌えば、音楽が流れてよくハーモニーして行くものです。合唱団の一歯車になって偏狭な発声を強いられることは避けなければなりません。これは若い皆さんの声の発展に何よりも有害なことです。

◉「パート別に声の出し方に違い(意識することの違い)があるか?」
例えばバスだからといっていつも重く暗く、いわゆるバスらしく歌う、ということは間違いです。曲によって伸縮自在に最適なものが出せるように、柔軟な声がだせるようにトレーニングをすることです。

◉「次のような場合、どのようにしたら良いか?」

以下のことを矯正するためには、次のような一人一人のレッスンが必要です。
・先ず落ち着くこと。
・一声づつ出だしが爆ぜないように注意深く
・明るく軽く歌って行く。
・舌、下顎、上胸をよく緩める。
・すぐに大きな声を目指さない。小さな声でトレーニングして行く。

「浅い声、薄い声になってしまう」
「息漏れがする(sop)」
「息が長く続かない。(ブレスが浅いから?)」
「声量が不足する。響きが不足する。」
「クレッシェンドができない。フレーズが途中で弱まる。」
「ハミング、(クローズ)がうまく響かない。不自然である。」
「音程が下がる。」
「高音でPが出来ない」
「高音が出ない。ファルセットへのチェンジがうまくいかない。かすれた感じになる。弱々しい声になる。」

⭕上に掲げた基本的な事項を基に丹念に訓練していけばこれらの問題点は解決していきます。

◉「全身を使って歌えていない。腹筋が使えていない。支える力が足りない。」
正しい発声は、全身を使おうとしてはいけない、歌唱時に必要な器官は横隔膜と声帯だけです。エネルギーは腹筋ではなく横隔膜から来る。横隔膜は人の喜怒哀楽、感情の根源であって、笑ったり泣いたり、くしゃみや咳などで感じることができます。これは上体がリラックスしていないと働かない。また腹筋を使おうとすると却ってその動きが原因で、横隔膜はその正しい働きを封じられてしまいます。
従って腹筋運動、腕立て伏せなどは歌唱のためには有害となります。
あらゆるスポーツは息をせき止めずに、吐きながらおこなうことが肝要です。
この度のロンドン五輪で私は競技とは別にとても驚いたことがあります。女子重量挙げでシルバーメダリストになった三宅選手のことです。
彼女の試合後のインタビューでの話し声なのですが、その声の透明なこと、明るいこと、暖かいこと、伸縮自在なこと、そして何よりも浄らかかなことに感動してしまいました。普通に考えればこのスポーツは力仕事ですから、男まさりでドラ声の女性が出て来て、柔な男子である私などすぐに謝って敬遠したくなりそうなタイプだろうと思っていたのです。彼女の、無駄な力を取り去った声、これこそが重量挙げにおいて必要な最小の筋肉のみを使い、横隔膜からの凄まじいエネルギーをタイミング良く来させることに習熟した結果であろう、父親の三宅義信氏が長年かけて会得した尊いメトードであるのだろうと思った次第です。

◉「軽く明るい喉のメカニズムとは?」
合唱のレッスンの時に私はサンプルの声をたくさん出しましたね。どうぞそれを思い出して下さい。模範唱から感じ取ることが間違いない伝承となります。

◉「声の響きの方向は前?後?」
「鼻腔へ響かせることへの理解。軟口蓋への意識の欠如?」
これらは声が共鳴する場所を意識しようとしている質問ですね。
肺から出た息が喉頭の声帯を通過する時に声に変換されるわけで、その時点ですでに結果である声は決まってしまいます。共鳴は結果であるので場所を狙うのは間違い。自由な息遣いが正しい共鳴をもたらすのです。

🔴以上ですが、発声や歌唱、声楽、合唱についての質問がまだありましたら遠慮なく下記へ Mail をして下さい。

 b.i.z.en66@gmail.com      Libero Canto Japan       09065291371
                                       藤沢市鵠沼桜が岡4-15-27  ( 本鵠沼駅   2分)

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