長谷川 敏 Satoshi HASEGAWAのBlog

声楽テノール。東京藝術大学卒、同大学院修了。ウイーン国立音楽大学卒。 東京芸術大学、お茶の水女子大学、洗足学園音楽大学講師、茨城大学教授を歴任。東京二期会会員。茨城大学名誉教授。LiberoCantoJapan主宰者。 Libero Canto歌唱法、すなわちウイーンのSzamosi教授の自由な息によるクオリテイーの高い歌唱法を長年に渡り、研究し実践してきている。 神奈川県藤沢市在住             

2012年02月

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基本的な考え方
声を出すこと、歌うことというのは、立つこと、歩くこと、腕を上げ下げすること。腰掛けることなどなどと同様に、人間にとってすでに与えられている機能であって、何か人工的なやり方を加えないとそれができないというわけではない。手を上げるとはどういうことか。意思に基づく信号が脳から神経を伝って筋肉を動かすこれらのことが瞬時に意識しないで普通にできてしまう。そうしたことが歌唱の場合でも同様にある。先ず、歌唱については、考えて構えなければそれができないということではなく、人に本来与えられている機能をそのまま実現して行くということが基本になる。
次に声とは一体何かということになると、これは息そのものであり振動する空気である。肺から出る息が喉頭を通る時に声帯の振動によって声に変わる。そして口腔や鼻腔など共鳴する場所を通って身体から出て行くということ。
小学生、大人、老若男女、人種に関係なく健康であれば誰でも本来はよい声が出せるものである。
しかしながら各人はそれぞれの環境によって話し方、歌い方は様々に変わっていく。そして癖を獲得していくようになる。思うように声が出ない、話しにくい、歌いにくいというのは悪い癖がそれを邪魔しているからである。癖を直して正しい方へ向けてやることができれば、声は自由になっていくことができる。
本来持ち声などというものはない。ただ息が喉を通って身体の外に出て行くその過程で千差万別の声がその時その時に起きるということである。
 

自然でより良い歌唱のために
                                                                                                                  長谷川 敏
                                          
       声楽教育について
 教師がなすべきこと。~理想像として~
 
充分な声楽技術をもち、楽曲を理解することができる。範唱が適確にできる。
・    児童・生徒への指導について、児童・生徒の声がうまく出せない時、その部分を指摘で 
きる。
1. なぜ声がうまく出せないか、
2. どうすれば出せるようになるか、
3. 模範唱をして正しい歌い方を実際に児童・生徒へ示すことができる。
4. 児童・生徒がうまくできなかったその部分を直して、声を出させる技術があること。
       
・そして、正しい歌唱技術の上に立った音楽作りができる。 
  一般に声の良し悪しは生まれつきのものであると考える人が多いのだが、それは間違いではなかろうか。世の中には確かに良い声をすぐに出せる人も存在する。しかしそれは、その人の声がそこで機能しやすい状態にあるということではないか。
教師としては、良い声はそのまま伸ばしてやり、逆に上手に声が出ないときには、その発声方 法に欠点がある場合が大部分であると認識して、それらを改良してやるというのが大事な仕事 であろう。
 
実際の授業の現場では「さあ、皆さん大きな声で元気よく歌っていきましょう!」というような感じで子どもたちに歌わせることが多いと思われるが、これでは子どもたちは胸に力を入れてしまって身体を硬直させる。そしてこの張り切った状態で歌うのでは低声域から中声域は何とかなるが、高声域にかかると必ずアンバランスが生まれてうまく歌えないことになる。
楠本教諭がこうした問題の解決のため、身体の束縛のない発声法を求めて努力を重ね、現場に生かす方法を追求しておられるのは、このことを長年研究している筆者にとっても大変心強い。
 

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